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にの、にの?

Since 2009

とっぷぅあばうと小説あり□ 同人誤字脱字案内メール

オリジナル作品

マル

ここ最近の作品の中では一番芳しくない成績を残した作品。
せめてもの供養にここに公開します。
たぶん2010年作品

連載

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 3.0 非移植 ライセンスの下に提供されています。

マルリ、という集まり。高校時代に同じアーチェリー部に所属していて、どういうわけだか仲良くなった三人組だった。それぞれの名前の頭をとって、マルリ。どこぞのアイドルグループのようなネーミング術である。高校を卒業してからはじめて会ったとき、リョウコが〝マルリにしよー〟なんていいだし、ルミは〝なんか中二っぽい〟と反対したものの、マサキが〝いいんじゃない?〟となって、多数決でマルリとなった。

そんなマルリ、この日は近くにできた大型ショッピングモールで遊ぶ計画だった。日中は散々いろんな店を見てまわって、時々ものを買ったりしながらワイワイとやっていた。そして夜、早めに入ったビュッフェバイキングの店での夕食をとった。店頭のチョコレートフォンテインが特徴的な店だった。

マサキは皿にステーキやらグラタンやら、いかにもカロリーの高そうなものを山ほど積み上げていた。牛ステーキにいたっては皿の半分を占めるほどだった。対してルミはカットされたモンブランやベイクドチーズケーキなどをあわせてホールがひとつできあがっていて、その上にショートケーキが二つ倒れていた。皿にのるケーキ十個。二人に文句するリョウコは普通なのかといえば、もっぱらサラダ系しかもられておらず、人のコトは言えなかった。とはいえ、最も体によさそうなのはリョウコの皿だが。

しかし早食いなのはこともあろうリョウコで、あっという間にザワークラウトとシーザーサラダを食べつくして、コールスローとポテトサラダとってくるね、なんて口にしながらも席を立った。リョウコもリョウコだよねー、とケーキをほおばる声に、マサキも、そうだな、と答えた。

マサキはステーキを口にしながらあたりを眺めた。見えるかぎり空席となっているテーブルはなく、その多くが女性グループだった。男性の姿は家族連れの父親か、いわゆるカップルできているらしい人だった。いずれも少数派で、マサキのような友達連れできたなんて言うのはおそらく皆無だろう。確信はない、ただ、食事中の人々の笑顔がそう思わせただけだった。

マサキはやわらかい肉質からにじみでる肉汁を味わった。甘いとも辛いともつかない、肉そのもののうまみだ。ミディアムの焼き具合がそれをかむときまで隠していて、かめばたちまちあふれでる。ちょっと見た目の良い店の料理というのは、肥えていない舌には極上だった。

「ねえ、ちょっとお願いなんだけれど」

「ん、なに?」

「今度アキバいきたいんだ。サークルの備品とか私用のとかを買いたいから。せっかくだから、デートもしようよ」

「デート? いいよ、でも、いつ?」

マサキとルミの会話の中、山もりのコールスローが戻ってきた。またサークルのコトー? と口にしながら席に座るが、次のタイミングにはフォークをコールスローに刺していた。

「さりげなくきこえてたんだけど、デートって? ふたり付き合いだしたの?」

「ああ、まあ、そんなとこ」

「へー、そうなんだ、そうなんだ」

リョウコの手が一瞬戸惑った。ふーん、と声にだして、フォークにのるコールスローを口に入れる。ちらっと隣のルミに視線を流すリョウコ。次に流すはマサキへ。

できている二人とその友一人。マサキに向けられているリョウコの視線がどこか気まずそうだった。そりゃあそうだ、見方をかえれば、カレシカノジョの間にリョウコが入っている恰好になっているのだから。この話題をつづけるのはまずい、いますぐにでも変えなければ、マサキはイスに座りなおして口を開いた。

やはりリョウコも同じコトを思ったか、マサキよりも先に手をうった。次のマルリに主催者を誰にするかを決めて、それから、なにをしようかという話しあいである。

するとたちまちルミが饒舌になった。あふれるばかりのルミの要望。しかしマサキはその言葉に耳を傾けるつもりは到底なく、しきりにリョウコに意識をそそいだ。いつもなら人が喋っていることなんて気にせずサラダを口にする彼女の手はなかなか動かなかった。マシンガンに似た言葉の嵐をうみだしているルミに目がいっているものの、それが話をきいているのとは少し違うのはなんとなく分かった。相づちもなし。ポテトサラダの上ではねあがるフォーク。つまらなそうな目つき。おしゃべりを楽しんでいない。

リョウコがマサキの目に気づいたのか、自らの皿に目を落として、ポテトサラダをすくいあげた。すると、いままでにないペースでポテトサラダとコールスローを平らげて、おかわりに席を立ってしまった。リョウコの目つきはひどく冷めていた。リョウコには悪いことをしてしまった、マサキは心の中に平謝りした。

若干失敗した空気だったマルリ―たぶんルミは気づいていないし、リョウコも気まずさのようなものでいっぱいだったろう―から一夜明けて、マサキの家にルミがいた。マルリというお遊びをしていたのだが、実のところ、マサキとルミは試験期間の真っただ中にいた。この日の午後に試験が待っている。その直前、二人がとっている近代日本文学史の試験勉強をしようというのだ。

だったらマルリを延期しろ、とでもいいたくなるが、別の大学に通うリョウコと都合があうのが昨日だけでしょうがなかった、というのが首謀者であるルミのいい分だった。

ふたりがテキストとノートを広げているテーブルはふたりで使うには小さいものだった。また、マサキは背後のベッドが背もたれがわりにしていて、ルミは後ろの二段引き出しのチェストが背もたれ。ベランダを仕切っている窓の上にはブラインドがかけられている。男の一人暮らしにしてはたいそうきれいにしてあると思えば、マサキの隣には寝まきがぬいだまま放ってあった。

休憩がてら台所に立ったマサキは、収納から銀色のマキネッタとコーヒー粉を取り出した。マキネッタを三つに分解して、一番下の部分には水を、真ん中の部分にはコーヒー粉を入れた。スプーンの腹でぎゅうぎゅうと軽く押しこみつつも平らにして、再びマキネッタを組み立てて、網をのせたコンロに置く。カチンとなる火のレバー。火は弱火。

「そういえばな、ネット見てたらいいサイトがあったんだ」

「へえ、どんなの?」

「ポエムとか、ちょっとした文章が書いてある創作系なんだけれど、文章がきれいで」

「マサキってそういうのに興味あったんだ」

「そういうわけじゃないけどさ、たまたま見かけてさ、いいなーって」

「じゃあパソコンつけていい? 私も見てみたい」

「ブックマの、〝りょんの部屋〟ってところ」

マサキはルミの言葉に口は使いながらも、目と耳はマキネッタにくぎづけだった。ガスの青い炎を前にしゃがみこんで、出来あがりを待っていた。エスプレッソが淹れられている音どころか、沸騰する音さえせず、聞こえるのはガスの燃えるゴオという音とパソコンが起動する音だけ。パソコンがおとなしくなれば、今度はマウスをクリックする音で、その頃になってようやくマキネッタから音がきこえるようになった。シュボーと、バルブでぎゅうぎゅうに高められた蒸気の圧力に押されてコーヒー粉の間を上がってゆく湯の音。フタ間から一気に噴き出す蒸気に、コーヒーの濃い香りが広がった。

「あ、あった。かわいいトップページだね」

「だろ? そこの上から二番目のとこ」

「うんうん。ええと、これなんかどうかな? 隣のぬくもり、近くにあっても、距離は遠くて、手を重ねられる距離なのに、届かない……恋愛ネタかあ」

「基本的にそのノリだよ」

マサキはコンロの火を止めてからデミタスカップを用意した。アルミ製の細長く小さなそのカップにコーヒーを注ぐと、表面にはチョコホイップのような色をした細かな泡がのっていた。マサキはその泡めがけてスティックシュガーを一本ずつ。中のグラニュー糖は泡にはばまれ、その泡に溶けだしていた。シュガーを通さないほど強いそれ―クレマに、マサキは満足げにうなずいた。

「はいこれ、今日のは上出来だよ」

「ありがと。んー、いい香り。でさあ、マサキってこういうの好きだよね、恋愛ものだけど、片想いネタっていうのかな? でも最後には成就する的な」

「ルミだって嫌いじゃないだろ?」

「嫌いではないけど、好きでもないっていうか。片想いネタってどれも同じように感じるんだよね」

ルミはコーヒーをすすりながら、ホームページのほかの作品をクリックした。たまたま表示された作品は散文で、でもひと文が短いのでポエムとあまり変わらないような印象だった。たしか、マサキが覚えているかぎり、やはりそれも片想いネタで、学校からの帰り道のコトを女の子視点からつづったものだった。

ルミがニュウっと上半身を乗り出して、パソコンの画面に視線を注いだ。画面上の読みづらい文字に目を凝らす中、時々、ふーん、とつぶやいた。背もたれに背中を預けるときがあるけれども、そのときはきまってコーヒーを口に含んだ。スクロールして、背中を預けて、コーヒーをちびちびと飲む。外を走るトラックによる振動を地震と勘違いするぐらいの静かな時間だった。

コーヒーを飲みほしたと同時に、ルミは画面のブラウザを消した。やはり口からでるのは、ふーん、だった。そう口にしながら、ナミは席をたった。

「小説のワンシーン」

「それが一番しっくりくるかな。できるならばちゃんとはじまりから終わりのある物語を読みたいものだけど」

「りょんって人にそこまでの力はないってことでしょ」

「手厳しいね」

「集中力と持続力。うちのサークルにでも入ってれば簡単に養えるものを」

「まあ、アレで必要な集中力はダテじゃないからな。的をねらって、照準を合わせて」

マサキは手で拳銃の形をつくってマミをねらった。プシュン、と口をとがらせながら銃声を発し、手の銃の銃口がはねあがった。なにそれ? とルミはカップを水で洗い流しながらバカにした。デミタスを食器かごに逆立ちさせてから、両手で拳銃をつくって撃ち返した。

「明日はどれぐらい人が集まるかな?」

「正直、俺らしかいないんじゃない? だって俺らは今日で試験が終わるけれど、まだ試験期間の真っただ中だからね。試験が残ってれば来ないだろ」

「やっぱ試験期間中はサークルを休みにしておくべきだったかな」

「まあでも、サークル全体の活動日ってのはないんだし、いいんじゃない?」

「それもそっか」

ルミが台所から戻ってきた。マサキの横をよこぎってテーブルに中腰となった。よこぎるとき、さりげなくマサキの腰に触れた。授業ノートとテキストを手にとり、かばんにしまうと、マサキの名前を呼んだ。指さす先には掛け時計があって、大学へ向かうにはちょうど良い時間をさし示していた。

||ススム>>