にの、にの?

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二次創作

立て続けに散る桜とともに

桜さんを主人公にしたストーリーに忠実でやるつもりで書いたスピンオフ。
いや、番長は桜さんだと思います。
2009年作品

原著作者情報

原著作者=木下英一
ばとね!

連載

6 years have been passed since the incident..

私は光家本邸敷地内の寮にいた。すっかり光家の女中として馴染み、私の後輩まで出来たほどである。可憐――可憐さんも人嫌いが治ったようで、可憐さんと話しているとちょくちょく友達の話が出てくるようになった。他の女中さんにもちゃんと会話ができているし、孝明さんにも、父さんにも話をしているようだ。可憐さんは変わった。私もいつしか大学四年だ。このことを知っているのは女中長さんと、父さんだけ。

「これで、いいんだよね、天国の二人」

窓際に歩み寄った。テーブルとテレビ、剣道道具、本物の剣、ゲーム機以外この和室にはなかった。私はメイド服の中に隠れている尻尾を振ってみた。

「桜さん、朝の給仕そろそろですよ」

私はその声に三角の耳をぴくりとさせた。耳の動きがなくなると、耳を指の腹で挟み込むようにして触った。短くて柔らかい毛が指を撫でている。

「今行きます」

私は答え、耳から手を離した。指先には灰色の毛が数本か付いていた。

今度は左手を見下ろした。手中にはアンクレットがある。美しい石が私を見つめていた。この石を見る度に安らかな気分になる。だが私にはそのような気分に浸っている時間はない。石の視線を遮るように目を瞑った。

「装着」

一瞬にして左手の感じていた重さがなくなる。尻尾の感覚もなくなる。耳もぴくぴくしない。偽りの姿に変身した私は、扉に振り返り、仕事場へと向かう。

扉を開けると、太陽の明るい日差しが射し込んでいた。

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