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にの、にの?

Since 2009

とっぷぅあばうと小説あり□ 同人誤字脱字案内メール

二次創作

ダンがゆく!

遠い昔に書いたけれども途中で忘れされれたブツ。ファイル整理をしていたらたまたま見つけたので掲載。

やっぱり、ダンはダンで面白い。

2009年作品
2012年一部改訂

原著作者情報

原著作者=木下英一
フェイレンワールド

単発

ダンにとっては、なけなしの金でかったローブがずぶ濡れになったことや、金欠のために大陸のあいだを泳いで渡ってきたことよりも、一目惚れの人からもらった手紙がグショグショに濡れてしまったことがつらかった。

ダンは遠泳をするまえに中身を読んでいた。ダンが好きだと書かれたそれは、彼の中でたちまち宝物となったのだが、もう開けることもできないほどになってしまった。でも、開けなくともダンに対する愛情がにじんでくる気がして、ぐっしょりでも宝物だった。

魔法使いなら魔法で乾かせばいいじゃないか、という人もいることだろう。しかし、それは叶わない。ダンは遠泳のあいだに体力を回復しながらやってきたため、もう魔力が残っていないのだ。

ダンはしなしなになった封筒を見下ろして、すっかりしょげているその子のダンに対する思いがつづられていた手紙も、塩水で破けそうになっている状態では恐らく、インクもすっかりぼやけてしまっているに違いない。そもそも、海水のせいで、開ければたちまち破けてしまう。

手紙が濡れてしまっているように、ダンの服もまたぐちょぐちょに濡れて重くなっていた。一歩踏み出せば1メートルほど下に海面が揺れている。ダンは海からあがってきたばかりだった。

「これもそれも、こんな所に来るから……」

ダンのライバル――だと思い込んでいる――としているライを目指して、ダンは海を渡ってきたのだ。彼にだけは異様なほどの敵対心を抱いていて、あとをつけてはなんども戦いを挑んでいるのだ。とはいえ、ライの前に立ちはだかったところで、へっぽこ魔道士なダンでは傷一つ追わせられないのが常ではあるけれども。

ただ、ライは彼のガッツとタフさだけは認めている。どんな所へでも、たとえ侵入が困難な場所でもライを追うためだったら入り込むほどの根性とひるまないだけのタフさがあるのだ。港に座りこんでいるダンは息が荒くなっている様子はないけれども、大陸と大陸の間を6日間かけて泳いできたのである。

遠くから声が聞こえた。青い、学ランのような服を揃ってきている二人組が、ダンを指差していた。二言三言言葉を交わしてから、全力疾走してきた。

「おいお前、なにをしているんだ!」

「不法入国者か!」

ダンは魔道士として全くのへっぽこであるけれども、それ以上に運のない男だった。こともあろうか一般人が入るのが許されていない港に上陸してしまったのだ。

ああもう、とダンは悪態をつきながらも、移動魔法を唱えて逃げ切ろうとしたけれども、周りの景色の変わる様子はなかった。魔力が尽きているのを改めて実感させられたダン。なんだよもう、とまたもや毒づくと、海の中に飛び込んだ。ダンにはそれしか手立てがなかった。